ナースプラクティショナーとは

ナースプラクティショナーとは

私は現在アメリカにあるがんセンターの外来でナースプラクティショナー(以下NP)として働いている。そもそもナースプラクティショナーってなにか?

NPはアドヴァンスプラクティスナース(上級看護師)とも呼ばれている。NPとはある一定の教育(修士課程以上)そして試験に合格した看護師に対して、診断、処方、その他の処置(例えば、カテーテル挿入、腹腔穿刺などの)を行う権限が与えられている資格である。(注:アメリカの場合州によって、施設によってこの権限委譲の程度は様々であるし、NPの自律性も異なる。)

アメリカにおけるNPの歴史は長く、コロラド大学でLoretta Ford という人が1965年に初めてNPプログラムを作成したのが始まりである。ちょうどこの時代にアメリカで医師の専門化が進んだこと、メディケア・メディケイド(アメリカの高齢者、低所得者用の医療保険)がスタートして医療へのアクセスが増えたことによるプライマリーケアの不足を補うために始まった資格である。そのため、活躍の場はプライマリーケア領域が主だったが、着実にNPの有効性を研究などを通して示し、現在では専門 (腫瘍内科、外科、循環器)のクリニック、病棟、ICU、ERなど急性期の場と活動の場を広げている。

働く領域により業務内容は異なるが、外来で働く自分の場合は、①クリニックで患者さんを医師と診察する、②新規受診の患者の予診(病歴、治療歴などを全部レビューしておく)③ 一人で調子の悪い患者さんや、化学療法の治療に来た患者さんの診察、必要に応じて処方をする(医療用麻薬から高血圧の薬まで)④検査結果を連絡するなどの電話対応、⑤患者さんからのメッセージ対応、⑥多部署からの呼び出し対応 (放射線科からCTで異常所見の連絡、化学療法センターの看護師さんから患者さんの容態の変化)、⑦そしてアメリカならではの保険会社との交渉などである。

ざっくりした感覚では今している仕事の多くが、日本の大学病院では医師が行わなければならなかった業務に近い。アメリカの大学病院の医師は何をしているかというと、腫瘍内科の場合には外来診療が週1-2日のみで、あとは研究をしている。アメリカでNPとして働くようになり、いわゆる医師の仕事の一部を引き受けている形だがこれが結構忙しい。医療のシステムは違うにしても、日本の医師たちが外来診療、入院患者さんの管理、そして当直をしながら、研究もするというのはなかなか超人的であると思う。

ちなみに日本でも特定看護師という新しい資格ができつつあるがこれはアメリカのナースプラクティショナーをモデルにしている。ただ日本の特定看護師という資格に関してはナースプラクティショナーのもつ全ての権限というよりも一部を導入する形に近いと思う。
”米国等では、医師の指示を受けずに一定レベルの診断や治療などを行うことができる「Nurse Practitioner(ナース・プラクティショナー)」という看護の資格があり、医療現場で活躍しています。
しかし、現在の日本の法律においては、看護職は、医師の指示を受けなければ医行為を行うことはできず、また、診断や処方を行うことはできません。したがって、米国等の「ナース・プラクティショナー」に相当する資格は現在の日本にはありません。” (看護協会のHPより引用)

アメリカでも50年かかって今の地位を確立したナースプラクティショナーという資格。日本の特定看護師の制度が今後どうなって行くか楽しみです。

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