大腸がん啓蒙月間

大腸がん啓蒙月間

あっという間に3月が終わってしまったが、3月は大腸ガンの啓蒙月間でした。残念ながら、乳がんのピンクリボン(10月以外は)に比べてあんまり認知されていませんが。。。大腸(直腸含む)癌はアメリカでは罹患率、死亡率ともに第4位、そして日本では罹患率、死亡率で第2位というある意味メジャーなガン。

大腸がんの啓蒙月間に合わせて、私の働いているクリニックで患者さん対象のパーティーがありました。対象となるのは、大腸がんに罹患し、現在治療中、完治して5年の経過観察を終えた人様々である。隣接する大学の建物を借り、ちょっとしたフィンガーフードやスイーツ、そしてビールやワインを飲みつつ、大腸がんに関した3つのレクチャーを聞くと言った趣旨のものでした。自分の備忘録も含めて講義の内容をまとめてみました。

大腸ガンについて
大腸がんに関する最近の統計に関すること、年齢別で55歳以上ではやや減少のに対し、20台30台の若年僧で大腸がんの罹患率がじんわり増えてること(注1) 。治療に関することでは、昨年は特定のタイプ(MSI-H:high level microsatellite instability)の大腸がんに対して、免疫療法のkeytrudaがFDA認可されたこと。ただこの免疫療法が効くと期待されるタイプの大腸がん(MSI-H)は全体の大腸がんの約15%程度である。というわけで、目下残りの85%のタイプの大腸ガン(MSS:microsatellite stable)の人にどうやって免疫療法を聞くようにするかという、免疫療法と別のものを組み合わせた、フェーズ1/2免疫療法の臨床試験が全米で沢山のあり次なるブレークスルーに期待がかかると言った大腸がんの最新の臨床試験に関する次なる治療法に関することとなかなか盛り沢山。

 

遺伝性の大腸ガンに関する研究
遺伝性の大腸がんとしておそらく一番有名なのはリンチ症候群で、リンチ症候群に関連する修復遺伝子(ミスマッチリペアプロテイン)を全てのスクリーンするのがうちの施設で始まったのが2008年。それ以前に診断された人はそもそもスクリーンもなされず、遺伝相談などがなかったこともあり、大腸ガンの遺伝検査に関するアップデートもありなかなか有意義な講義でした。ちなみに最近の研究によると95%の人はリンチ症候群を持っていることを知らないそうです。ある意味公衆衛生的な問題でもあるんですよね、知るのは怖いけど、このリンチ症候群を持っていると分かった人は、胃ガン、大腸がん、皮膚ガン、女性器のガン、尿路上皮癌 )スクリーニングを強化することで、がんの早期発見につながるのでとっても大事。

とはいえどちらも結構専門的で、これは果たして患者さん向けなのか?と思ってたところ、3つ目の講義がまさに患者さん向けの内容でした。

Microbiome(微生物叢)に関わる研究
Microbiomeとは、微生物叢のことで、体に数万といる微生物が特に腸に多いというのは想像の通りで、microbiomeが大腸ガンに関わっているんではという研究が盛んとのことで、その研究にまつわる話でした。

ちなみにガンと感染症の現在のところわかっているものとしては、
-HPV(ヒトパピローマウィルス)は、口咽頭癌、子宮頚がん、肛門がん。
-C型肝炎やB型肝炎ウィルスは肝臓ガン
−ピロリ菌は胃がん
−Evウィルスはリンパ腫ガン

では大腸ガンは???という問いに対する研究がいくつもあるようで、最近の知見では、どうやら疑わしいのは毒産生するタイプの①E.coli,②bacteroides fragili と③fusobacterium 。中でも①②はマウスを使った実験でガンが進行することが確認されているとのこと。慢性的な炎症がガンにの原因となるのは納得(事実、潰瘍性大腸炎やクローン病などは大腸がんのリスクが高いと言われている)。

じゃあどうしたらいいのかってことで、紹介されてたこの論文
(注2)
いいマイクロバイオムを形成するにはファイバー摂取を日常で増やすのがいいらしい。

繊維の摂取量を増やせばいいの???、はたまたプロバイオティクスなのかと参加者からの質問が相次ぎ会場が沸く。ま、答えは、バランスよく野菜を食べるのが一番、とまあ至極真っ当な結論。プロバイオティクスはFDAでそもそも規制されてないから効果がわかりにくいし、市販薬の便秘用のファイバーよりはやっぱり食べ物からの様々なタイプのファイバーがおススメ。シナボンの繊維含有量が2g野菜たっぷりの食事が75g。。。。

というわけで、このプレゼンを聞いてからもっぱら野菜を食べるようになった単純な私。何を食べたらいいか?という(おもいっきりテレビの健康情報のような)根本的な問いは、万国共通人気が高いと思いを馳せた大腸ガン月間でした。

注1 Siegel, R. L., Fedewa, S. A., Anderson, W. F., Miller, K. D., Ma, J., Rosenberg, P. S., & Jemal, A. (2017). Colorectal cancer incidence patterns in the United States, 1974–2013. JNCI: Journal of the National Cancer Institute, 109(8).

注2 Yang, Y., Zhao, L. G., Wu, Q. J., Ma, X., & Xiang, Y. B. (2015). Association between dietary fiber and lower risk of all-cause mortality: a meta-analysis of cohort studies. American journal of epidemiology, 181(2), 83-91.

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